近年になり大衆を対象にした温浴施設(公衆浴場・日帰り温泉・温泉旅館・ホテル・スーパー銭湯・健康ランド・福祉施設等)で利用した人がレジオネラ症に感染し、入院、死亡事故まで発生し、施設の運営管理に大きな衝撃を与えています。所轄官庁である厚生労働省はレジオネラ属菌防止対策について次々と指針をだして、問題解決にあたっている現状です。
厚生労働省の指針、栃木県の条例を基に、当社の経験と実例を活かし、温浴施設におけるレジオネラ属菌の対応について解説します。宮崎県日向市のような悲惨な事故が二度と起こらず、利用客が安心して入浴できる様、また温浴施設を運営されている皆さん方に少しでも参考になればと考えています。
 
 
 
i.レジオネラ属菌の性状

■生殖:水環境を中心とした生活環境(土壌・河川・湖沼など)自然界に広く生息。

■繁殖:約20〜45℃で繁殖、50〜60℃でも生息。水中内でかなり長期間生存。蒸留水で139日間生存。
レジオネラが存在する浴槽水を室温で保存したところ50日 経過しても減少しなかった事例もある。

■特徴:細胞内増殖菌。自然界ではアメーバ内。ヒトにはマクロファジー(※1)内で増殖。

※)1マクロファジーは体の中に侵入した有害物を捕まえて細胞内で消化するとともに、それらの異物に抵抗するための免疫情報をリンパ球に伝える役割を持っている。
ii.レジオネラ属菌の発生例
■ 平成14年7月 宮崎県日向市の新設日帰り温泉施設を利用した多数の人が肺炎のような病状になりました。検査をおこなったところレジオネラ属菌が検出されました。
その後の調査で、この日帰り温泉施設の浴槽水からもレジオネラ属菌が検出され、患者から検出されたものと同一の菌ということが分かりました。結果的に7名の死者、295名の感染者をだした日本国内で最大のレジオネラ症感染事故となりました。
iii.レジオネラ症について
■レジオネラ症とは:レジオネラ属菌が感染し、起こる病気で、症状によって2つに分類されます。
 

■レジオネラ症の特徴
一般的には健康で抵抗力が強い人は感染しにくいといわれています。乳幼児、高齢者、病気にかかっている人、喫煙者、多量飲酒者、過労の人など抵抗力が弱い人が感染、発病しやすいといわれています。人から人へは感染はしません。

■浴槽水がレジオネラ症の感染源となる理由
浴槽水を循環させてるシステムを使うと、ろ過器や配管等に生物膜(バイオフィルム)が形成されます。レジオネラ属菌はその生物膜の中生息するアメーバーなど微生物に寄生し、増殖します。そしてアメーバーがバースト(破裂)し、また、他のアメーバーに寄生します。その浴槽水のエアロゾルを吸い込んだり、浴槽水が気管に入り、菌が肺に到達すると、レジオネラ症に感染する恐れがあります。肺の中の細胞(マイクロファジー)はレジオネラ属菌が寄生し増殖します。

■生物膜とは?
浴槽内循環系統の洗浄が不十分な場合、ぬめりが付く事があります。これを生物膜(バイオフィルム)といいます。これは付着した微生物が作り出した粘液性の物質で形成されています。浴槽水は、温かく、又、入浴者の垢などの有機物が豊富なことから、容易に生物膜が形成されます。 また、生物膜は紫外線や消毒薬剤を通さないため、アメーバーが繁殖するのに適した環境を作っています。